パソコンが普及しメールやワープロが使われるようになり本当に便利になったと実感する。手で書くよりははるかに速く、漢字などの変換もきわめて正確に行われる。また、読む側も、規格の文字で書かれているので読みやすい。しかし、気が付いてみると、自分自身の漢字識別能力はそれほどでもないが、漢字を書く能力が急速に衰えておる。いつの間にか分厚い国時辞典、漢字辞典や、鉛筆立ては姿を消し、無機質なプラスチックの板状のパソコンが机の上を占拠している。書籍や音楽はダウンロードで済ませ、本やCDを店まで行って買うことも少なくなった。便利さと引き換えに、急激に変化したこの不自然さに問題がないとは考えられない。少し時代を戻し、五感から感じ取れるバランスのとれた状態を面倒でも作り出さなければ、機械ではない人間に影響が出るような気がする。脳科学はここ10年で飛躍的な進歩をとげ、さまざまなことが解明されてきたが、まだまだ解らない部分が圧倒的に多いと聞く。今の最新技術は、まだまだ解明されていない我々の脳にとって、あまりにオーバースペックであると感じる。
前田由紀夫

HongKong
不動産価格は底打ちしたのか
内閣府の発表では、6月の月例経済報告から「悪化」の表現が削除され、二か月連続の上方修正で“景気底打ち宣言”をした形となった。また、日銀も景気の現状判断について「下げ止まりつつある」との認識を示し日本経済が明るさを取り戻してきているような発表が相次いだ。しかし、選挙を意識しての発表なのか、実感は伴わない。景気判断と株価とはタイムラグがあるものの3月10日の日経平均7,054円が今回の発表に至る要因だったのだろう。
さて、株価が底打ちし、景気が持ちなおしてゆくとすれば、不動産の底打ちはいつになるのだろう。国土交通省の、平成21年、第1四半期、主要都市の高度利用地 地価動向報告によると、地価下落地点の数は前回と同じだが、下落幅が緩やかになり、一部の住宅地などでは下落幅が縮小した地点が拡大した地点を上回った。また、冷え込んだ国内不動産も外資系の大手保険会社の持つ建物が売却され、大手不動産業者が1000億円規模での大型取引を行ったりと動き出した様子も垣間見える。都市未来研究所によれば、4月の不動産取引額は1800億円と好調である。マンション市況も改善の動きがあり、不動産経済研究所の発表によると前年同期の水準には届かないが、販売戸数で20ケ月前のミニバブル前の水準に近づき、市場に回復の兆しがあると判断している。大手不動産会社の株価も三井不動産、三菱地所といった銘柄はこのところ堅調な動きとなっている。
J-REIT市場は、政府による支援はあるものの、オフィス・商業系では空室率の増加、家賃の減額等の影響で軟調に推移し、住宅系は景気変動のリスクが少ないものが堅調に推移している。J-REITは国内不動産市場の出口の受け皿としての機能があり、国内の実物不動産と密接な関係にあり実物不動産に与える影響は大きい。
以上のことから考えると不動産も底打ちが近い、または既に底打ちしているとも分析できる。しかし、この実感のない経済状況ではまだ不安要素も拭えない。今回の景気回復の兆しは、生産や在庫調整に対する先行指数から判断され、未だ設備、雇用面では先行きの不透明感が強い。昨年のリーマンショック以降、企業の生産水準は急激に落ち込んだが、回復といってもまだまだ低い水準となっている。よって、固定費である雇用・賃金の過剰感はいまだに強く設備投資も積極的に行える状態にはなっていない。政府による経済対策で雇用調整助成金や公的投資の積み増しが打ち出され、先の見えない中では安心材料となったが、設備投資や個人消費を持ち上げる効果には充分に効果を発揮しているとはいい難い。
急激な景気の悪化から急激な上昇、いわゆるV字回復を期待したいところだが、現状では急激な回復を考える要素はなく、現在の水準で長く停滞すると予想するエコノミストが大半である。
内閣府によると世界金融・経済危機は2009年、世界の経済成長率は戦後初のマイナスとなり、2010年も欧米の経済回復が遅れ1%程度の成長にとどまるとしている。
このようなマクロ動向を不動産市場に対応させ、需給のバランスを模索すると、不動産の売買価格が見えてくる。現在が不動産の底値だとすれば、雇用や所得が改善し、有効需要と購入マインドが向上しなければならない。さまざまな角度で考えれば、不動産価格はまだ調整局面にあり、今後さらなる株価の反騰があり、雇用が安定しなければ見えてきた底値がさらに割れてしまうことも考えられる。また、最近では不動産業者の破たんも最終局面にある様子であり、市場の調整作用は着々と進み、持ちこたえられない事業者は市場から姿を消し、新たな局面が見えてきたように感じる。
最後に、CMBC (Commercial Mortgage Backed Securitis) 商業用不動産担保融資の問題に触れる。これは不動産自体を担保とした融資(ノンリコースローン)の商品が今後償還期限を迎えることに問題がある。不動産価格は予想以上に下落し、リファイナンス資金も枯渇した状況によるデフォルトが増加するのではないかと予想される。もしタイミングが悪く現在の底打ち状況でデフォルト案件が増えればさらに不動産価格は下落する要因となる。
さまざまな問題が複雑に絡まり、予想するのは困難だが、現在不動産が底打ちをしたとしても、そこから上昇させる要因は乏しく、しばらくは様子をみる状況が続くのではないだろうか。
前田由紀夫
奇跡の脳
著者 ジル ボルト テイラー(原著) 竹内 薫(翻訳)
出版社 新潮社
価格 1,785円(税込)

奇跡の脳
著者はハーバード大学で活躍していた女性脳科学者。ある朝、頭痛で目覚め、助けを求めようにも電話のかけ方さえ分からない。必死の思いで同僚に連絡をとった。脳卒中により壊れてゆく脳で体験したこと、そしてそれがどんなに神秘的な体験であったのかを記録した物語です。彼女は脳科学者であったが故、その変化してゆく脳の状態を内面から感じ、それを外部に発信するまでになった。また、その陰には数学者である母親の献身的な介護があった。8年間のリハビリで彼女が見つけたものとはなにか?とても刺激的な一冊です。