昨年から続く金融危機、景気の停滞によりどんよりとした経済状況が続く中、先の月例経済報告では「デフレ」という文言も織り込まれました。今年は経済の冷え込みの影響により不動産もその将来性に明るい兆しはみられない年となりました。もちろん、こんな時期だからこそ安価で不動産を手に入れ、事業に活用したり、マイホームを手に入れたりするチャンスともなります。長い目で見れば不動産投資の良い時期なのかもしれません。バブル経済崩壊後の土地神話は夢と消え、昨今の経済の疲弊が拍車をかけ不動産のゆくえに大きく影を落としています。低金利、年金不安と言われる中、個人の投資家も不動産投資を考える人は多くなりました。確かに不動産は目に見える建物や駐車場等を所有しているという安心感や所得税や相続税の軽減効が見込まれ、他の金融商品より身近でわかりやすい特徴があります。今までは、単純に不動産を購入し、賃料収入を得て、その売却利益を得るというのが一般的でした。投資額を回収するための賃料収入(インカムゲイン)、そして出口としての不動産売却利益(キャピタルゲイン)。たとえ当初の投資金額よりも安価に売却したとしても、月々の賃料が確保できていれば、節税もできもし売却損(キャピタルロス)が出たとしてもダメージは回避できます。しかし、これはあくまで机上の計算であり、いま問題となっているのはこの収入である賃料が本当に予定どおりに回収できるかどうかという点です。昨今の賃貸不動産状況は地域により大きく変わり、賃料をいくら値下げしても入居者が集まらない物件も出てきています。これは不動産を利用する側の動き、すなわちマーケットの構造をみればわかります。たとえば、人口ピラミッドをみると、住宅を新たに必要としている20歳後半~30歳前半の人口あたりを見ると解ることがあります。この30歳前後の人が生まれたのは第二次ベビーブームと言われ、第一次ベビーブームの子供たちであり、その後人口は減っています。つまり、この部分を切り取ってみると30歳前後はすでに親の家があり住宅は残されるのです。また、世帯数に関しては増加の傾向にあるのですが、ここでも問題があります。その内訳は高齢者夫婦から高齢者単身と長寿になればなるほど、高齢者単身世帯化の増加となります。これは、のちに急速に世帯数を減らし、住宅を余らせることになるでしょう。
わが国の少子高齢化を考えれば将来の不動産のあり方が見えてくると思います。もちろん地域差はありますが、すでに住宅の空き家率は13%以上となりフローからストックの時代となっています。これからは、新たに建てるのではなく、既存の住宅を修繕する住まい方が主流になってくると考えられます。また、日本の住宅寿命は諸外国にくらべ短く、苦労して住宅ローンを完済した後には住宅価値は限りなく0に近くなります。最近になって政策的に超長期住宅の構想が具体化されてきました。持続可能な住いを作り、将来にわたってその価値を継承してゆく構想です。この構想は、構造部分(スケルトン)を長寿命化し、内装や設備(インフィル)部分をその時代に合ったスタイルに改装することで快適な暮らしと低コストを実現します。もちろんこれらの住宅は断熱性能も高く、環境配慮型住宅であり省エネルギーなので水道光熱費も安く抑えられます。
また、「不動産のゆくえ」特に住宅においては、もうひとつ重要な要素があります。それはわが国特有の事情である地震です。新耐震と言われる建築基準法の耐震基準は昭和56年に新基準が施工されています。この時期を境に新しい建物は地震に強く将来の価値も望めます。しかし、古いものは耐震改修工事の必要があり、維持するのには大きなコストがかかります。現在では昭和56年以降に建設された住宅は全住宅の60%を超えていますが、まだまだすべての住宅の耐震性能を上げるのには時間がかかります。
今年、連載をしてきました「不動産のゆくえ」ですが、はなかなか予想できないものです。景気の動向や人口の動向を良くみながら、短期、中期、長期にどのように変化するかを、地域の要因を重ね合わせて総合的な判断をしながら考えなくてはなりません。

人口ピラミッド
前田由紀夫